肝臓の病気について

肝臓は人の体のなかで最も大きい臓器の1つです。その働きは多岐にわたり、いずれの働きも生命を維持するのにかけがえのないものです。
肝臓は高い予備力と再生力をもち、多少の障害では自覚症状が表れにくく病気に気づくのが遅れてしまう事があります。そのため「沈黙の臓器」と呼ばれています。
健康診断や血液検査などで、肝臓のSOSに早めに気づく事が大切です。
肝臓の病気は、原因により症状の出方や病気の進み方、治療の方法が異なります。

病態別

急性肝炎

急性肝炎とは、主に肝炎ウイルスの感染が原因でおきる急性の肝機能障害を呈する病気です。一般的には経過が良好な疾患ですが、約1-2%の患者さんは劇症化し、一度劇症化すると高率に死に至る可能性が高くなります。

肝炎情報センター

慢性肝炎

慢性肝炎とは、慢性的に肝臓に炎症を生じる病気です。肝炎が6ヶ月以上持続していると、慢性肝炎と診断されます。原因はB型・C型肝炎などウイルス肝炎、免疫によるものなど多岐にわたり、不明の場合も稀にあります。慢性肝炎は肝硬変や肝がん等の更に重い疾患に進展していく場合があるため、早期発見・早期治療が大切です。

手軽に検査(FIB-4 Index)

肝がん

肝臓のがんには胆管細胞ががんになるものと、肝細胞ががんになるものがあります。
日本では肝細胞癌の多くの原因は、B型・C型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎が占めていましたが、近年脂肪肝(NASH)などによる非ウイルス性肝細胞癌が増加しています。

肝炎情報センター

がん情報サービス

病因別

B型ウイルス性肝炎

B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介した感染により起こる肝臓の病気です。母子感染と成人してからの感染があります。ウイルスに感染した肝細胞の免疫反応によって、一部の人は急性肝炎になります。慢性肝炎の状態になると現存の治療ではウイルスを抑えることはできますが、完全にウイルスを消失させる事が難しい肝炎です。

肝炎情報センター

ウイルス性肝炎研究財団

C型ウイルス性肝炎

C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。一度感染すると慢性化しやすいのが特徴です。近年経口抗ウイルス薬の登場により、安全で効果的な治療が可能になりました。

肝炎情報センター

ウイルス性肝炎研究財団

その他ウイルス性肝炎(A型、E型)

A型やE型は経口感染であり、ウイルスに汚染された水、食物を介して感染します。E型肝炎は、ウイルスに汚染され加熱調理が不十分な肉食(豚肉、猪肉、鹿肉)など感染が成立することから注意が必要です。
ウイルス性急性肝炎の潜伏期は通常は、3週間から8週間の範囲です。

肝炎情報センター

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、アルコールを飲まないあるいは少量の飲酒しかしていない方にみられます。脂肪肝から脂肪肝炎、肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病の事をいいます。非アルコール性脂肪肝の一部は炎症をおこし、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になり、肝硬変に進行したり肝がんを発症したりします。

肝炎情報センター

日本消化器病学会

手軽に検査(BMI)

アルコール性肝疾患

長期にわたる過剰の飲酒が原因と考えられる肝疾患です。アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変までを含む一連の肝臓病の事をいいます。一部の病態からは肝がんを発症することがあります。

肝炎情報センター

薬物性肝障害

薬の代謝は肝臓で行われることが多く、さまざまな代謝産物が肝臓に出現するため、副作用として肝機能障害が多いと考えられています。
薬物そのものや代謝産物による「中毒性」の肝機能障害は、用量に関係しており決められた用法・用量を守る事が重要です。アレルギー体質や特定の個人(代謝や分解の個人差)の体質による「特異体質性」は、用量に関係ないため事前に予測する事は困難です。
薬の副作用によって肝機能障害が生じた場合、気づかずに長期投与すると重症化する場合があるため、注意が必要です。
健康食品やサプリメントも医薬品との飲み合わせが問題になる事や、そのものが肝機能障害の原因となる事もあります。

厚生労働省

その他の肝臓病

自己免疫性肝炎

慢性に経過する肝炎で、何らかの原因により、自らの肝細胞を自分の体内の免疫が破壊してしまう自己免疫性疾患です。

難病情報センター

厚生労働省難治性疾患政策研究事業 難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

原発性胆汁性胆管炎

慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患で、肝臓のなかの細い胆管を自分の体内の免疫破壊してしまう自己免疫性疾患です。

難病情報センター

厚生労働省難治性疾患政策研究事業 難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

原発性硬化性胆管炎

肝臓の中・外の比較的太い胆管が障害されて硬化・狭窄し、胆汁の流出障害を起こす原因が明らかでない病気です。

難病情報センター

特発性門脈圧亢進症

肝臓や門脈に特別な病変が無いにもかかわらず、門脈の圧が亢進しそれによる症を呈する正確な原因が明らかでない病気です。

難病情報センター

バッド・キアリ症候群

肝静脈かその先の肝部下大静脈の閉塞ないしは狭窄によって、門脈の圧が上昇しそれによる症状を呈する病気です。

難病情報センター