アルコール性肝障害・肝硬変

アルコールによって引き起こされる全身の障害

アルコールは肝臓以外にも、全身に影響を与えます。アルコール性急性・慢性膵(すい)炎、アルコール性心筋症、糖尿病、アルコールの直接作用による食道炎や胃炎、ビタミン欠乏になることでウェルニッケ脳症や認知症などの中枢神経障害と末梢神経障害、さらに急性アルコール中毒、依存症などになります。さらに転落・交通事故などによる2次的障害を起こすことがあります。依存症患者数は日本人全体の約2%程度ですが、飲酒人口の25%は依存症予備軍とされています。「いつでもやめられる」と思っていても『やめない』人は依存予備軍であり、誰もが依存状態になりえます。しかし禁酒を続けることも大変で、離脱症状(いわゆる禁断症状)がでることがあります。また離脱症状がでるほどには普段飲んでいなくても、宴席や疲れたときなどつい飲んでしまい、結局止められないことがあります。日本酒換算で一日1合(※)までの量に控え、週に少なくとも2回の休肝日を設けることが推奨されています。

(※)日本酒1合とは、ビール:500ml、ワイン:グラス2杯に相当

アルコール性肝障害とは

飲んだアルコールの大部分は小腸で吸収されますが、基本的にアルコールはどの粘膜からも、そのままの形で吸収されます。肝臓の細胞内でアルコールはアセトアルデヒドに変えられ、さらにアルデヒド脱水素酵素の働きにより酢酸(お酢)に変わり、無害化されます。

肝障害は、アルコールやアセトアルデヒドが直接的に肝臓を障害するほか、アルコールを無害化することが負担となり、普段の肝臓の働きである糖・脂肪を分解・合成することが妨げられることになり、これらの作用が重なって起こると考えられています。風邪薬の成分の一つであるアセトアミノフェンなどの薬剤、ウイルスなどによる肝炎、糖尿病や鉄過剰状態は、肝障害を助長します。日本人の約半数は飲むと赤くなりやすい体質で、アルデヒド脱水素酵素の働きが遺伝的に弱く、慢性的な肝障害を起こします。また日本人の約4%はアルデヒド脱水素酵素の活性がほとんどなく、急性中毒症を起こすため、飲酒は危険です。アルコールに対する体質を判定する検査があります。

アルコール性肝障害の診断について

アルコール性肝障害にはさまざまな状態があります。日本酒換算で毎日平均3合以上(常習飲酒家、女性では2合/日)を3年間以上飲酒していると、脂肪肝になることがあります。毎日平均7合以上(大酒家、女性では約4合/日)を10年以上続けていると、肝硬変になることがあります。肝硬変初期であっても症状は無く、肝不全に進行してから黄疸・腹水・食道静脈瘤などの症状が出ます。常習飲酒家や大酒家が急に飲酒量を増やすと、アルコール性肝炎を起こすことがあります。症状は腹痛、発熱ですが、脳症・腎不全・肺炎・消化管出血などを起こすと重症化し、禁酒しても1ヶ月以内に死亡することがあります。

血液検査ではγ-GTPが上昇し、ALT(GPT)がAST(GOT)より高い値を示します。またビタミン摂取不足・吸収不足により赤血球が大きくなります。アルコール性肝炎では白血球数が増加し、血清ビリルビン値が上昇します。肝硬変では一般的な肝硬変に伴う血液検査値の変化が認められます。

脂肪肝になると肝全体が、腹部超音波検査では腎臓に比べて白く、腹部CTスキャンでは黒く見えます。

肝硬変になると、肝表面が凸凹になり、脾臓が腫れて大きくなります。肝臓の組織を採取して顕微鏡で見る検査(肝生検)で脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変の状態がわかるため、正確な診断には大切な検査です。ただし重症肝炎・進行した肝硬変・肝不全では出血などの危険が高くなるため、できないことがあります。

アルコール性肝障害から肝臓がんになることがあり、定期的な超音波・CTスキャンなど画像検査や、静脈瘤を診る上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。

治療法について

禁酒以外に効果的な治療法はありません。アルコール性肝硬変の場合、飲酒を続けると5年後まで生きられる確率は30%ですが、禁酒すると80%以上に上昇します。

肝臓の保護作用を期待してウルソデオキシコール酸内服治療が行なわれますが、飲酒を継続していると効果は不明です。重症のアルコール性肝炎では劇症肝炎に準じた治療が必要となることがあります。

普段の生活が病状の進行に大きく関わるため、かかりつけ医や肝臓専門医の指示とよく相談しながら、治療していくようにしましょう。

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